ネオ・ユートピア編集部です。
下記をお知らせします。
F大全集第4期第2回配本が発売されました。
とびだせミクロ 1
2013年3月25日 発売
定価2,415円(税込)
A5判/496ページ
試し読みはこちら。
解説:井川浩さん(元「とびだせミクロ」担当のほか、「ドラえもん カレンダー」また角川書店にて「ザテレビジョン」「TokyoWalker」を創刊)
●作品の位置づけ
ちなみに「とびだせミクロ 」は、「海の王子」と「パーマン」の間を繋ぐ作品。「海の王子」が乗っていたはやぶさ号というロケットを普通の少年のベルトのホルスターに格納できるというアイデアが秀逸。
《活劇アクション》
海の王子(S34~)
・ロケット五郎(絵物語)(S34~)
・ロケット=ボーイ(絵物語)(S35~)
・星の子ガン(合作)(S36)
・ロケットGメン(S37)
・海の王子・学年誌板(S39)
↓
《生活ギャグを導入した作品》
・ロケットけんちゃん(S35~)
・銀星少年(合作)※
・すすめロボケット(S37)
・とびだせミクロ(S38~)
↓
オバケのQ太郎(S39)/パーマン(S42)
また、後年書かれた「きゃぷてんボン」(「パジャママン」との合本で全集で発行済み)はこの「とびだせミクロ 」のリメイクです。
けんちゃん
勉強嫌いのお調子者だが、いざとなると勇気とアイデアを駆使し、解決に全力を尽くす小学生。
ミクロ
まるやま博士が作った高性能ロケット。いつもはけんのベルトのホルスターに入っているが、「とびだせミクロ!」のかけ声で飛び出す。知能もある。
まりこちゃん
ミクロの操縦までこなす行動派の女の子で、けんのピンチを幾度となく救う。さすがに恋愛感情はまだないようだ。
まるやま博士
けんの祖父。ともに生活し、様々な発明を行う良きアドバイザーでもあり、実はトラブルメーカーでもある。
●作品のかいせつ
【あらすじ】けん少年のホルスターに格納されたデルタ翼のロケット「ミクロ」。ホルスターをポンとたたくと搭乗できるサイズのミクロが発進!ミクロに乗ったけんがまる山博士、まりこのサポートを得て、毎回発生する特殊犯罪に自ら向かっていく。敵は宝石泥棒から科学力を武器にした犯罪組織や侵略宇宙人までバラエティに富んでいる。
【解説】主人公けんは数々の窮地に立った時も持ち前のアイディアとミクロの活躍でいずれも切り抜ける。オッチョコチョイで、ミクロを私用してまりこと旅行に行ったりと調子のいいところも目立つが、能動的な正義感と読者と等身大なキャラのリアリズムー現在でも多用されているヒーロー主人公の二面性をも具現していると言える。「ミクロ」と「ロボケット」の活動範囲は宇宙空間にまで及ぶ。「生活空間」という臨場感を加味した作家の代表作はいずれもこれらの作品の後にリリースされている。事件解決をプロットとしつつもズッコケキャラである「ロボケット」の路線が『ドラえもん』に集約されると拡大解釈すれば、身に付けた枚ティアイテムを活用する『ミクロ』はヒーロー作品の珠玉作『パーマン』へと続く「ミッシングリング」という分析ができるかもしれない。細かい部分に触れるとけんの身に付けたベルトやヘルメットには多少ならず自身の「ヒーロー性」を演出するデザイン性に富んだものであった。
●幼稚園・S38
★とびだしたロケット(幼稚園1963年1月号)
★さらわれたまるやま博士(幼稚園1963年2月号)
★強盗をやっつけろ(幼稚園1963年3月号)
第1話「とびだしたロケット」はストーリー不在のいわば「パイロット」的作品。設定が固まっていないのが手伝って実は第一話で初登場するミクロが一番スマートに描かれている。10メートル近くミクロが室内で伸長して壁穴から飛んでいく姿は壮観。荒唐無稽な世界感がここから始まった。
第2話「さらわれたまるやま博士」ではアクション傾向がさっそく示される。この話までけんの衣装は普段着のままだ。
第3話「強盗をやっつけろ」にてまりこの家からダイヤを強奪した班員を捕まえたお礼に、まりこの父からヘルメットをもらう。1~2話はノーヘルメット。わずか3話でフォーマットが決定されたのである。
小学一年生・S38
★ふんわりガス(小学一年生1963年4月号)
★ノア博士の野望(小学一年生1963年5月号)
★巨大な亀にさらわれて… (小学一年生1963年6月号)
★そっくりロボット(小学一年生1963年7月号)
★恐竜と少女(小学一年生1963年8月号)
★イラビヤのアラビン(1)(小学一年生1963年9月号)
★イラビヤのアラビン(2)(1963年9月号別冊付録)
★サーカス戦争(1)(小学一年生1963年10月号)
★サーカス戦争(2)(1963年10月号別冊付録)
★どうぞうロボット(1)(小学一年生1963年11月号)
★どうぞうロボット(2)(1963年11月号別冊付録)
★どうぞうロボット(3)(小学一年生1963年12月号)
★ブラック島にきたスパイ (1)(小学一年生1964年1月号)
★ブラック島にきたスパイ (2)(1964年1月号別冊付録)
★ミクロ対忍者(1)(小学一年生1964年2月号)
★ミクロ対忍者(2)(1964年2月号別冊付録)
★人類ミクロ化計画(1)(小学一年生1964年3月号)
★人類ミクロ化計画(2)(1964年3月号別冊付録)
主人公の行動範囲も広がり、傑作の名にふさわしいプロットや名シーンを提供している。
アクション巨編が多数発表されており、中でも別冊を含む「どうぞうロボット」は年破壊のカタストロフィを余すところ無く描き、小学一年生が読むには首をひねる程の迫力。また一月号では爆弾の強奪を軸に軍事国のエゴが露呈する問題作が発表されている。
「どうぞうロボット」の女神像の容貌に、トラウマになった子がいるかもしれない。
「ブラック島にきたスパイ」では軍事国ウランの警備隊に一行は拉致される。緊迫感もひとしおだ。
別冊付録も多く、本誌では事件の発端のみを扱い別冊で事件解決というパターンを取る。
なお、別冊は全てB6サイズということもあり1頁あたりのコマ割も大きい。太い筆致で、時代を感じつつも初期の藤本先生の絵柄の魅力が伝わってくる。
*「作品のかいせつ」以降は1999年NeoUtopia29号「藤本ヒーロー史2:初期作品特集」より転載しました。在庫絶版ですが、ヤフオクやまんだらけでときどき出回っています。
【関連リンク】
・F大全集第4期